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※作品の下のコメントは、講師:田中光堂によるものです。
※コメント末尾の【 】印は、漆塗りを手掛けた塗師(ぬし)の名前です。
凡例: 【魁】…櫻井魁山 【圭】…宇田川圭介 【光】…田中光堂
『リンクの輪』のページに“塗師のご紹介”を載せてありますので、どうぞご覧ください!
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*2011年12月1日掲載分(1) *2012年1月1日掲載分(2) *2012年7月10日掲載分(4) *2012年11月4日掲載分(5)
*2013年5月5日掲載分(6) *2014年1月5日掲載分(7) *2014年8月16日掲載分(8) *2016年9月1日掲載分(9)
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*以下は、2012年4月4日掲載分の16作品です。
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(↑)桜文様の茶托3枚セットです。 花びらと一緒に「蕾・葉」をあしらったデザインで、やはり入門5作目の作品です。 この茶托でも、『くずし』『きざみ』による輪郭線の変形が行われていますが、 アウトラインの複雑な凹凸が、よく切れる刃物で手際よく処理されています。 その他にも、『花芯脈・葉脈の細い薬研』『花芯・葉・蕾を分ける太い薬研』『花弁の刀痕』『ガクや葉の峰立て』 ・・・等々の諸技法が効果的に彫り分けられており、曖昧な表現がほとんど見受けられません。 「一点一画を、心をこめて、大切に彫る」という彫りの基本が、忠実に実践されている作品だと思います。 漆塗りは、彫りの陰影を活かすために、やや渋めの色調に仕立てて、刀痕模様をはっきりと研ぎだしました。 稽古板の赤マルは、作者がご自分でつけたもので、『彫り損じを肝に銘じる』ための印かと思われます。 塗師:【光】 |
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(↑)『武蔵国 国府瓦(むさしのくに こくふがわら)』文様の手鏡で、入門4作目の作品です。 “武蔵国 国府瓦”は、東京・府中市の「大国魂神社」付近で出土した“古瓦”の考古学資料で、 その文様には、伝統的な『蓮の花の文様』がかたどられています。 中央にくびれのある単弁型の蓮弁には、花芯部に向かって直線的な“峰立て”が施されており、 蓮の花の張りのある満開感が強調されています。 子葉(蓮弁の中の小さめの花びら)はこんもりと丸く、間弁(重なりの下側の花弁)の“細長い峰立て”の鋭さとは対照的な造形です。 この作品は、以上の古瓦文様の特徴がよく表現されていて、彫り物らしい重厚感のある仕上がりになりました。 漆塗りは、作者の希望で、かなり渋めの色調を採用。 銀朱の割り込み率を下げ、マコモを二度蒔きして、古美粉(ふるびこ)で古色を演出してあります。 稽古板を見ると、かなり研ぎ込んだ切れ味の良い刃物を使っていることが、よく分かりますね。 塗師:【光】 |
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(↑)煎茶盆と煎茶托一揃(ひとそろい)のセットです。 盆の図案は、寺院系の古い宝相華唐草をアレンジしたもので、 『薬研彫り』と『浅い浮き彫り』の技法が併用されています。 茶托のほうは古典的な意匠で、 シンプルな通し刀痕(:流れ刀痕、流し刀痕とも)を放射状に彫り込んだ『流れ八方刀痕』系の技法と、 “菊の花”をイメージした輪花文様系の『きざみ』とで構成されています。 盆の中央の王冠状の宝相華文様(:右下に拡大写真)が面白く、洋間での使用も似合いそうです。 盆の平らな地の部分は“半艶消し”の仕上がりで、茶托の“本艶”が浮き立つように配慮されています。 おいしい煎茶を和やかに頂けそうな、たいへん結構な仕上がりだと思います。 塗師:【魁】 |
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(↑)御敷き膳と銘々皿のセットです。 『御敷き膳』は、いわゆる“ランチオンマット”のようなもので、 “折り回した縁”や“脚”があれば、『折敷(おしき)』と呼ばれます。 この御膳は皿や盆のように使うのもOKだと思います。 膳の一枝柿は速水御舟先生の日本画を鎌倉彫で表現したもので、 作者がぜひ彫りたいと惚れ込んだ名品を、ほぼ忠実にレリーフ化したオマージュ作品です。 膳の彫技は、近景に“外ギメ”、遠景に“内ギメ”中間景に“両ギメ”を使い分ける“片切り彫”で、桃と栗の銘々皿の方は、すべてを両ギメの自由角度で表現しました。 ここでは紹介できませんでしたが、 銘々皿は、枇杷・林檎・柿を合わせた5枚一揃になっています。 写真では分かりにくいですが、塗りの背景の黒色は半艶消しになっていて、文様が自然に浮き立つように配慮されています。 お稽古では、栗のイガと葉との“境目”をどのように彫刻表現するかが、非常に悩ましい問題でした。最終的には『面一(:つらいち。同一平面のこと)で彫って、塗り分ける』という方法を採りましたが、そこに至るまでの試行錯誤の後が、稽古板に彫り込まれていて、あらためて見るとたいへん感慨深いです。 塗師:【魁】 |
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(↑)宝相華唐草(ほうそうげからくさ)文様の二段重です。 『宝相華』は想像上の植物で、 牡丹をはじめとする様々な植物の瑞相を総合的に意匠化した“縁起の良い文様”として、古来よりたいへん珍重されてきました。 この作品の文様は、平等院(:蓋)と薬師寺(:側面)の装飾文様を、鎌倉彫風にアレンジして図案化したものです。 彫技は、蓋にも側面にも“地透き”の技法が使われていて、特に身の八つの側面を同じ調子に彫り上げるのは、たいへんな根気が必要だったろうと思います。 蔓・茎のカーブの内刳り(うちぐり)にはゆるい“しゃくり”、外刳りにはやや丸みのある“面取り”が施されており、捻転するワラビ状のツルの先端に、宝相華のエネルギーが漲(みなぎ)っているように感じられます。 箱中は“黒蝋色漆(くろろいろうるし)”の仕上げで、カジュアル・フォーマルを問わず、ほぼ万能に使えます。 このような“労作”は、どんな席でも人目を惹き、労をねぎらわれ、珍重されることでしょう。 孫子の代まで大切に使い継がれる、ご家宝の二段重になることと思います。 塗師:【魁】 |
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(↑)牡丹文様の茶托一揃(ひとそろい)で、入門5作目の作品です。 この作品にも、『くずし』と『きざみ』の工程が施されており、 5枚の手並みを同じように揃えるのはたいへんだったろうと思います。 一番気を使うのは、花びらを柔らかく波打たせながら、細かい刀痕を全面に打ちつけるところで、 この作業は、これまでも多くの初級会員を悩ませてきました。 作者もいろいろ苦心なさったようで、その試行錯誤の後が稽古板に刻まれています。 細かい刀痕は、木地で見ると凹凸がそれほどはっきりしないのに、 塗りあがってくると一つ一つの刀痕文様が明快に浮き上がるので、なかなか油断できません。 対策としては――、 「電気スタンドの光線を低い位置から取り込んで、刀痕の陰影を浮き上がらせながら彫り進める」 ――しかないのですが、この作者は作法を守ってよく頑張られました。 ひと彫りひと彫りの“息づかい”が感じられる、ゆかしい作品だと思います。塗師:【魁】 |
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(↑)双鶴文様の壁飾りです。 文様は、中国・朝鮮の伝統的な意匠から選択したとのことで、 作者が鎌倉彫用に若干のアレンジを加えました。 このタイプの大胆な図案は、表現のごまかしが効きにくく、基本技法の習熟度を問われる場合が多いですが、 ここでは――、 『地透き(中央部分)』『深い両薬研(翼・雲の背景)』『細い片薬研(嘴・首・胴の部分)』 『浅いしゃくり(翼の上の部分)』『深いしゃくり(雲の部分)』『内ギメ彫(:目の部分)』、 ―― などが縦横に使われていて、構図の大胆さが効果的に立体化されています。 彫りの最も深い部分は1cm弱ほどあり、正確に彫り込むために、彫刻刀の頻繁な研磨が欠かせませんでした。 また何気ないようですが、優しく穏やかに彫られた“眼の表情”が、とても印象的な作品でもあります。 塗師:【魁】 |
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(↑)桔梗の花籠文様の弁当箱です。 オリジナルは、『百工比照(ひゃくこうひしょう)』という加賀藩の工芸標本の中の一つ。 色絵と七宝をまじえた江戸初期の“釘隠し金具”の優品です。 彫技として難しいのが、『背景の地透き』と『籠の内法(うちのり)面の地透き』とを差別化して表現することで、 この作品では“彫りの深さ“や“地透き面の傾斜”を彫り分けることに心を砕きました。 籠本体の網目は、オリジナルの雰囲気にのっとり、1分の丸刀による線彫りで表現しました。 葉脈・花弁・花芯の表現など、オリジナルとは異なる表現も見られ、 金工作品を鎌倉彫に焼き直す際の様々な苦心が読み取れます。 籠の縁(:縄目状のかがり縁)の円周が、この意匠の立体的構成のカギを握っていますが、 レリーフとしての奥行き感も無難に表現できていて、見応えのある出来栄えだと思います。 塗師:【魁】 |
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(↑)青海波(せいがいは)文様の花台(直径15センチ)で、入門第1作目の作品です。 古くから『地紋(じもん)』と呼ばれる幾何学文様には、木彫技法の基礎的な要素がふんだんに盛り込まれており、 入門者にとっては格好の練習課題となるわけですが、中でも『青海波』には抜群の練習効果があるように思います。 この作品では、『太い片薬研(図案全体の輪郭線)』『たちこみ・きわぼり(波の重なりの表現)』『細い片薬研(一々の波の中の円弧)』を、 繰り返し練習できますので、知らず知らずのうちに基礎技法のエッセンスを身につけることができます。 この作品の作者は、初心者としてはたいへん精確な彫り口で、青海波全面を同じ調子で彫り上げています。塗師:【光】 |
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(↑)ねじ梅文様の丸盆(直径21センチ)で、入門2作目の作品です。 『ねじ梅』は、“家紋”でもおなじみの伝統文様ですが、鎌倉彫の基礎練習用の図案としてもたいへん有用で、 『刀痕(花びらと背景)』『両薬研(花芯の部分)』『しゃくり(花びらの輪郭部分)』 『こなし(遠近感を出す)』『面取り(めしべと花びらの周囲)』などの刀法・技法が、総合的に習得できます。 この作品の作者は、手がたい稽古を着々と積み重ねるのが大好きな方で、 (・・・反復練習が好きな生徒さんは珍しいのですが・・・笑)、 稽古板を見ると、真摯で誠実な日頃の練習姿勢がひしひしと伝わってきます。 塗師:【光】 |
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(↑)牡丹文彫香合(神奈川県立博物館所蔵)を下敷きにした壁飾りです。 オリジナルは、室町時代の作と目される大香合の優品で、他と比べると“地透き部分の面積”がかなり広く、 研究家から『彫刻に和様化の兆(きざ)しが観察される』と解説されている遺物です。 地透き部分に彫りつけられた“賽(さい)の目文様”は、工房や教室で「イカ」と呼ばれていますが、その語源はよく分かりません。。。 『イカを炙るときに、包丁で刻みを入れる“井桁(いげた)の形”に似ているから』と説明する先輩もいましたが、ほんとかなぁ・・・??笑 余白を嫌うように全面に彫刻を施す“充填文様”は、中国の「堆漆」でも大いに重んじられていますが、 その根底には“魔除けのムード”が色濃く漂っており、 彫り手が勝手気ままに省略・変更できない伝統的・宗教的なデザイン要素であったと思われます。 この大香合に見られる和風でアバウトな「イカ」文様は、 『地紋を省略したいけど、省略しきってしまうのはなんだか怖い』という微妙な気持ちの表れかもしれませんね。。。 ともあれ、この作品はとてもよく彫られていると思います。 オリジナルとは異なるタッチも散見されますが、この大香合が『大好きだ』とおっしゃる作者の眼識の深さと情熱を感じます。 花や葉の彫刻はオリジナルよりも分かりやすく整理されていて、明快な印象さえ受けます。 いわゆる『模刻』とは言いにくいですが、『これはこれで良い』という典型的な作例であると思います。 イカ部分の塗りの“艶消し仕上げ”が、彫り全体を引き立てています。 塗師:【魁】 |
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(↑)菊文様の壁飾りです。 オリジナルは都久夫須麻神社の本殿扉の彫り物で、流麗さとボリューム感を兼備した御宮彫りの優品です。 深さ7〜8ミリの『地透き法』によって背景をほぼ均一に彫り下げ、 “こなし(:遠近感を付けること)”の工程で下半部の肉を厚めに残し、上半部の肉を薄めに透き取りました。特に左側の茎は、上に伸びるにつれて、向こうへのけぞって見えるように、遠近感の調整をしてあります。 花弁・葉肉・ガクの部分に“峰立て”の表現が多用されているので“けばさ”や“くどさ”を感じさせないように、“しゃくり”を控えめに表現してあります。 このような社寺彫刻は、“典雅な品位”を彫刻表現できるか否かがポイントになりますので、飾り気のない素直な気持ちで彫ることが大切だと思います。 本番と同じ深さに彫り込まれた稽古板に、作者の真剣さがにじんでいます。 塗りは、作者の希望により、・黒干口塗り艶消し(背景)、・本朱干口塗り(葉・茎・地面)、・洗い朱黄口干口塗り(花芯部)、・洗い朱赤口+本朱の干口塗り(花弁)の4色塗り分けとしました。 塗師:【魁】 |
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(↑)@とA:初級に入門した生徒さんの『稽古板』です。 @には両薬研・片薬研・刀痕の練習がしてあります。 ・・・この生徒さんはかなり練習熱心です! 10本くらい彫って飽きてしまう人が多いのです。 Aには、ジグザグ・段々・ねじ梅の刀痕・名前などが練習してあります。 |
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(↑)BCDEF:これまでに講師が彫った『見本板』の一部です。 通常、講師の『見本彫り』は、生徒さんの稽古板を個別に“添削”しながら段階的に彫り進めて行きますが、 『事情があって長期休会する間、自宅で独りで稽古したい』というような場合には、 こっぱに見本を彫って、『見本板』としてお渡ししています。(復帰後には返却していただき、他の生徒さんに転貸してます。) C:「花もっこ」と呼ばれる伝統文様の見本板です。(工程解説のため、意図的に“一部未完成”の状態にしてあります。) ほとんど薬研だけで彫り上げる作品ですが、部分的な“肉付け”の選択肢があり、その説明にも使います。 D:法隆寺の唐草文様を彫った見本板です。右側の“脈入れ”のみ未完成で止めてあります。 E:香合用の図案で、“唐子文様”の見本板です。実寸は直径約7pです。 15年前に彫ったもので、あらためて見ると口元や指先、膝小僧の表現がイマイチで、 刀の切れ味も不十分ですが、当時の自分なりに頑張って彫ってあります。 F:帽子掛けの見本板です。 右半分に“こなし”の工程、左半分に“肉付け”と“脈入れ”の工程を彫り込んであります。 見本板は輪郭線を外ギメ彫で処理していますが、本彫はミシン抜きで仕上げました。 |
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