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※作品の下のコメントは、講師:田中光堂によるものです。
※コメント末尾の【 】印は、漆塗りを手掛けた塗師(ぬし)の名前です。
凡例: 【魁】…櫻井魁山 【圭】…宇田川圭介 【光】…田中光堂
『リンクの輪』のページに“塗師のご紹介”を載せてありますので、どうぞご覧ください!
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*2011年12月1日掲載分(1) *2012年1月1日掲載分(2) *2012年4月4日掲載分(3) *2012年7月10日掲載分(4)
*2012年11月4日掲載分(5) *2013年5月5日掲載分(6) *2014年1月5日掲載分(7) *2014年8月16日掲載分(8)
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*以下は、2016年9月1日掲載分です。
◆ざくろ文様の角皿です。 古い陶磁器の絵柄を下敷きに、レリーフ表現しやすいように作者が図案を再構成しました。 キワ彫りの深さは2~3ミリですが、今回はキワの刀痕をできるだけ細かく打ってサンドペーパーで丸め、 キメ彫りと浮き彫りを融合したような輪郭表現にしてあります。 塗りは、黒乾口(ひくち)塗り艶消し・洗い朱黄口(きぐち)乾口塗り・本朱(ほんしゅ)乾口塗りの3色塗り分け。 文様部分の色艶が引き立つように、背景色のブラックを「艶消し仕上げ」にしてみました。 割れた実の内壁の部分や、一枚一枚の葉っぱの表情がきちんと彫刻表現されていて、 細工の巧みな作品に仕上がっているなぁと思います。 【塗師:光】 |
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◆鷺と菊文様の丸盆です。 オリジナルは有名な『菊鷺文長方箱(:徳川美術館蔵の彫漆作品)』。 教室向きにデザインを簡素化して、丸盆になじむように再構成してみました。 このての図案は、背景部分の彫刻表現(:ここでは薬研彫と地透き)が作品の成否を大きく左右しますが、 作者は一点一画を丁寧に彫り上げ、菊と鷺の二つの主役をバランスよく浮き上げるのに成功していると思います。 よく見ると、葉脈・花弁脈・翼脈などの「薬研(やげん)の彫り分け」や、 羽毛・花弁・土・岩の「刀痕(とうこん)の彫り分け」がさりげなく工夫されていて、見飽きることがありません。 つがいの鷺のキョトンとした穏やかな眼差しもキュートです。 塗りは本朱干口(ひくち)塗りの研ぎ分け。特に中央の鷺と葉脈近辺を赤めに研ぎ出してあります。 【塗師:光】 |
◆ぶどう唐草文様の壁掛けです。 オリジナルは、薬師寺薬師如来座像の台座周囲にある唐草文様で、鎌倉彫ではおなじみのモチーフです。 金工作品であるオリジナルは、地透きで背景全体を掘り下げ、葉先から実に向かって深くしゃくり込んでゆくダイナミックな造形ですが、ここでは漆塗りの発色や艶味を考慮して、しゃくり&峰立てを出来るだけ控えめに表現してあります。 盛り上がった葉肉に、小さな刀痕を丁寧に打ち付ける表現は――オリジナルには見られない手法ですが――こうして一々の刀痕を研ぎ出して見るとなかなか壮観で、作者の真面目な制作姿勢や充実した集中力が伝わってきます。 同じテンポで几帳面に彫り出されたブドウの実もいい感じで、黒漆の色合いがよく似合ってます。塗りは、本朱乾口塗り研ぎ分けと黒乾口塗り。周辺の平面部分は黒を細長く研ぎ出して、根来(ねごろ)の趣きを出してみました。【塗師:光】 |
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◆鉄線文様の楕円皿(小判型)です。 デザインは陶磁器の古典紋様に取材したもので、花や葉の形状が個性的で面白く、細いツル茎も多用されています。 鎌倉彫的にはやや料理しにくい図案ですが、キメ彫技法が効果的に使われた結果、彫り口の明快な実用性の高い作品に仕上がりました。 特に花弁周囲の深い外ギメや、葉・蕾まわりのキメ幅の変化、細い薬研で表現されたツル茎などに工夫の跡がうかがわれ、絵柄のもつリズム感や軽快さが巧みに再現されていると思います。 この楕円皿(小判皿とも言います)の木地は“鉋目(かんなめ)仕上げ”になっていて、木地屋さんが鉋をかけた跡が淡い刀痕文様になって背景に浮き出ています。 塗りは本朱干口塗りの研ぎ分け。 鉋目のおぼろな横縞が、背景文様として加減良く研ぎ出されています。 【塗師:魁】 |
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◆屈輪文様の壁掛けです。 オリジナルは「屈輪文大香合(知恩寺蔵)」で、この屈輪(ぐり)文様が焼香用の大型香合の蓋に彫られています。 中央の五芒星型の剣菱文とその周囲を放射状にとり囲む屈輪文のバランスが絶妙で、道友会の教室でも人気の高い文様です。 このての幾何学文様は、彫りの形状や深さ・面取りの丸味・峰の立ち具合・しゃくりや刀痕の調子等々を均一に彫り上げる必要があり、なかなか難しい作業の連続ですが、この作品はたいへん粒のそろった彫り口で深さもちょうど良く、見ごたえのある仕上がりになりました。 面の取り具合や刀痕模様など、オリジナルとはニュアンスの異なる表現も散見されますが、現代風のオマージュ作品として、良い出来栄えであると思います。 【塗師:光】 ※知恩寺大香合については歴史のページにも解説があります。 |
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◆牡丹文様の丸盆です。 デザインは古い蒔絵文様を下敷きにしつつ、レリーフ向きに若干の省略と補足を加えました。 花の中心部は6ミリくらいの深さで、直径30センチの丸盆にしてはやや深めの彫りだったと記憶しています。 花弁先端のしゃくりや、そのしゃくりに沿う峰の立ち具合が美しく、たいへん完成度の高い仕上がりです。 背景の刀痕も、ところどころ小魚の群れが周遊しているような趣きがあり、鎌倉彫らしいです。 作者は鎌倉彫歴10余年、傘寿に近い男性ですが、作品が『継続は力なり』を実証しているように感じます。 【塗師:光】 |
◆青海波(せいがいは)文様の名刺盆です。 青海波の地紋彫りは、道友会では入門時の基礎教材(作品例)となっていますが、 この作品は、入会19年目の作者が基礎をおさらいするために、図案を再構成して彫ったものです。 ボリュームの異なる山型の青海波を上下にレイアウトし、 その中に脈入りの波紋と無地の波紋がランダムに配列されています。 無地の波紋は作者の意向で明暗を研ぎ分けました。 ほぼ等間隔に並んだ通し刀痕(:流し刀痕、流れ刀痕とも言います)も美しく、 青海波図案のバリエーションとしてたいへん味わい深い出来栄えになりました。 作者は「やっぱり基礎って難しいですね」と言っておられましたが、 彫り口にも意匠構成にも、19年間のお稽古の積み重ねがにじみ出ているように感じます。 塗りは、本朱乾口塗りの研ぎ分けです。 【塗師:光】 |
◆あじさい文様の写真立てです。 図案は作者のオリジナルで、ところどころに散らばっている水玉は“朝露”をイメージしたものです。 長方形の対角に花と葉を配置して、左右のシンメトリーを自然にくずしてあり、デザインセンスの良さを感じます。 あじさいの花の彫り方は色々ですが、ここではシャクリと峰立てだけでシンプルに表現してあります。 地透き(じすき)は上部(約3ミリ深)から下部(約2ミリ深)に向かって徐々に浅い彫りになるよう調整されています。 塗りは本朱乾口塗りの研ぎ分け。 主役の写真が引き立つように、朱の発色をやや控えめにしました。【塗師:光】 |
◆大唐花(おおからはな)文様の小判型手鏡です。 デザインは江戸千代紙の絵柄に取材したもので、楕円形の図案枠におさまるように、花・蕾・葉・ツルの配置を再構成してあります。 複雑に重なりあう花弁や、S字主脈の葉が手ぎわ良くこなされていて、説得力のあるレリーフ表現になりました。 キワ彫りの深さは最大で3ミリくらいですが、立ち込みがシャープで鋭角なため、古美粉(ふるびこ)装飾をほどこすと文様がくっきりと浮かび上がります。 塗りは本朱乾口塗り(ほんしゅひくちぬり)。 背景全体に細かい刀痕が打ってありますが、文様を強調するため、刀痕の研ぎ出しは控えめにしました。 【塗師:光】 (※バックナンバー(8)に このデザインのリミックスバージョンがあります。) |
◆菊文様の丸盆です。 図案は柴田是真先生の下絵集に取材したものですが、丸型の土俵でレリーフしやすいように、作者がレイアウトを再構成しました。 すべての花弁に一分丸刀で流し刀痕が打ってあり、とても繊細で几帳面な彫刻表現になっています。 細い流し刀痕を、狭い紡錘型の花弁に連続的に打つのは、何かと骨の折れる重神経作業ですが、作者は根気よく最後まで彫りきって、独特な細密表現を貫徹しました。 蕾・萼・茎・葉脈の表現にも細かい工夫がこらされていて、見る人の目を楽しませてくれます。背景の小粒な刀痕も、文様部分の密度の濃さとマッチしていて、バランスの良さを感じます。 塗りは本朱乾口塗りの研ぎ分け。外縁部はマコモを研ぎきって朱色を強調してみました。 【塗師:光】 |
◆山桜文様の銘々皿三枚組です。 図案は古典的な工芸文様をいくつか取り混ぜて制作しました。 直径15㎝のお皿用の図案としてはやや込み入った構成で、花・葉・蕾・茎が随所で複雑に重なりあっています。 輪郭線を外ギメ・内ギメ・両ギメの刀法で彫り分け、あっさりと遠近感を出して、丁寧に肉付けしていますが、 一分幅(:3ミリ幅)以下の刀を多用する作業の連続で、彫り口を統一するのが一苦労だったろうと思います。 入門5作目の作品として、力を尽くした立派な出来栄えになりました。 桜の花弁も三花三様の表現になっていて、ひと手間かけた味わいがありますね。 塗りは本朱干口塗り(ほんしゅひくちぬり)です。 【塗師:魁】 |
◆葡萄と栗鼠文様の壁飾りです。 オリジナルは西本願寺の浪の間・太鼓の間にある透かし彫りの欄間(らんま)彫刻。 装飾性が高い桃山社寺彫刻の代表作です。 作者は、“透かし彫り”の代わりに、深さ7~8ミリの“地透き”を全面にほどこし、 絵柄の複雑な重なり具合・絡まり具合を出来るだけ明快に表現しようとしました。 また、その深い彫りしろを利用して、ぶどうの房のボリューム感や奥行き感を効果的に彫り出し、 地透きで稼いだ彫りの深さを、無駄なく有効活用しようと試みています。 リスの尾の流し刀痕をはじめ、葉・枝茎・雲・地面・背景等の刀痕が分かりやすく彫り分けられていて、 オリジナルの欄間彫刻に対する思い入れの深さが伝わってきます。 オリジナルのリスは、眼光が鋭い猛々しい感じの“小獣”ですが、 ここでは家庭用の壁飾りであることを考慮して、やさしく可愛い“小動物”の表情に彫り変えました。 塗りは本朱干口塗りの研ぎ分け。 透いた地の部分は艶消しになっています。 【塗師:魁】 |
◆竹文様の姫鏡です。 デザインは古典的な工芸品の文様を組み合わせて、作者が制作しました。 手鏡の中央に一本の竹が直立する構図が斬新で、とても面白いと思います。 葉脈の彫刻表現には、大別して薬研彫と流し刀痕がありますが、ここでは流し刀痕が使われています。 流し刀痕は――経年使用(:漆の塗膜の摩耗)で峰のラインが表情豊かに変化するため(※)――、 鎌倉彫の小間物(こまもの:装身具系の小型日用品)の“使い込んだ味わい”を愛する方々に好まれる傾向があります。 この作品も、同じ理由で葉脈の研ぎ出しを控えました。 塗りは本朱干口塗りの研ぎ分けです。【塗師:光】 (※)マコモを含んだアズキ色の塗膜層が摩耗して朱漆層が現れる―→朱漆層が摩耗して黒漆層が現れる・・・という変化が楽しめます! 歴史のページに関連記事があります。 |
◆桃文様の弁当箱です。 デザインは古い陶磁器の文様を下敷きに、作者が楕円枠に収まるように再構成しました。 絵柄の最も外側の輪郭線は――小枝の輪郭を除いて――外ギメだけで縁取られており、 V字状の文様全体が背景から均一に浮き出しています。 左右の対称性が強い構図で、彫り口も均整がとれているため、生活工芸品らしい“安定感”があります。 葉先の返りが目立つ図案ですが、それらの返りを一つ一つ浮き彫りにしたことで、 それぞれの葉の個性が強調され、文様の賑やかさや面白味が増しているように感じます。 塗りは本朱干口塗りの研ぎ分け。蓋裏と身の内側は鮮やかな朱色で仕上げました。【塗師:魁】 |
◆南禅寺牡丹文様の掛け鏡です。 オリジナルは、鎌倉彫ではおなじみの『南禅寺牡丹文大香合』。 今回は「掛け鏡」というドーナツ状の図案枠の中で、モチーフのレイアウトを再構成してみました。 図案枠の幅に限りがあるため、花の上下が部分的に欠けていますが、 出来上がった作品を見ると、掛け鏡になっても“堂々たる威容”に変わりはないようです。 花芯部の彫り方がオリジナルと少し異なり、新しく創作した蕾も一つ追加されていますが、 そのほかは、オリジナルの彫り口を出来るだけ真似て彫ってあります。 地透きの深さと面取りの丸味のバランスが良く、薬研(やげん)も伸び伸びと入っていて、 丹精込めた上々の出来栄えになりました。 塗りは本朱干口塗りの研ぎ分け。 地透き部分は艶消しになっています。 【塗師:魁】 (※同じ文様の“壁掛け”の作品がバックナンバー(6)にあります。) |
◆粟と鶉(うずら)文様の壁飾りです。 オリジナルは立川流の社寺彫刻で、拝殿の虹梁上の建築装飾だったと記憶しています。 もともとは透かし彫りの作品ですが、ここでは深さ1センチ弱の地透きで背景を表現しました。 前出の『葡萄と栗鼠文様の壁飾り』と同じく、 房状に垂れ下がる粟の穂が、量感豊かに彫刻表現されています。 群れをなして反り返る横向きの葉、わずかに湿り気を帯びた地面の起伏、こけら状に重なり合う鶉の羽毛など、 難関難題のオンパレードですが、作者の真摯な刀捌きは、それぞれの特徴を巧みに表現していると思います。 オスの鶉は「ゴキッチョー」と鳴くそうですが(この作品では右側の鶉がシャウトしています!)、 鳴き声の語呂が『御吉兆(=良いきざし、幸先が良い)』に通じるため、除厄祈願に功を奏する“縁起の良い鳥”として、 神社仏閣の装飾彫刻に取り入れられたと言われます。 縁起物として玄関や居間に飾ると、幸運が舞い込んできそうです。 塗りは本朱干口塗りの研ぎ分けで、地(:背景)の部分は艶消しになっています。 【塗師:魁】 |
◆竹文様の丸盆(勾配型)です。 図案は、尾形光琳の工芸図案に準拠し、一部を鎌倉彫用に加筆・省略して制作しました。 竹の幹の流し刀痕が美しく、緩いタッチの葉の刀痕や、流れるような背景の刀痕とマッチしています。 出入りの煩雑なアウトラインで、キワ彫りするのが一苦労でしたが、茶器の座りが良さそうな、平らでふくよかな盆面に仕上がりました。 竹の葉を支える細枝の節目や、幹に残る枝打ちの節跡がさりげなく彫られていて、大胆な構図に小さな花を添えています。 塗りは本朱干口塗り。 見事な艶出しでまぶしい仕上がりです。 【塗師:魁】 |
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◆網代(あじろ)文様の輪花(りんか)盆です。 圧倒的な連続文様で、あらためてコメントしようとすると、しばし言葉を失います。笑 このての地紋(じもん)は、正確さと根気の良さが要求されますが、この作品は本当にきちんとに彫られています。 編み込みにリアリティを持たせるため、十字交差点ごとに小さな四角い“こなししろ”を設けているところが、 玄人っぽくて心にくいです。 極浅丸刀でしゃくりと峰立てを繰り返し、断続的な流し刀痕を全面に打ち付けて、 十文字型に走行する網代文様の骨組みをソフトに強調しています。 この流し刀痕は、薬研彫(やげんぼり)で代用することも出来ますが、 高級感・上品さ・経年変化などを総合的に考慮すると、やはり流し刀痕に軍配が上がるかと思います。 網代文の周囲にひも状の仕切りがありますが、これは作者が片薬研(かたやげん)と面取りで彫り出したものです。 塗りは本朱干口塗りの研ぎ分け。 塗るのも研ぐのも一仕事だったと思いますが、お蔭様で立派なお盆になりました。 【塗師:魁】 |
◆唐草文様の小判型手鏡です。 図案は、東大寺・平等院・興福寺などのお堂の装飾文様を参考にして制作しました。 浮き彫りにもできる図案ですが、今回は作者の意向でキメ彫を選択。キメ幅を微妙に調節して、外ギメ~両ギメ~内ギメを流動的に彫り分けています。 点対称系のシンメトリー図形なので、対応するパーツの彫りの粒を揃える必要がありますが、長い木彫歴をもつ作者は、このハードルを難無くクリアしています。 作者のアイデアにより、周囲の花芯をシンプルにして、中央の花芯部に細かい薬研を集中させましたが、絵柄全体の印象を引き締めるうえで大成功だったと思います。 塗りは本朱干口塗りの研ぎ分け。この手鏡はお孫さんにプレゼントされるとのことでした。 【塗師:光】 |
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◆梅文様の丸盆(勾配型)です。 図案は、作者の居住地域のマンホール蓋の絵柄を参考にしつつ、構図や細部を再構成して制作しました。 花がたくさんある絵なので、花芯を三様に彫り分け、無地の花もランダムに散らして、しつこい表現にならないように工夫してあります。 幹と枝は、面を取らずに平地(ひらじ)のままで表現し、お盆の縁と一緒に濃い目の色合いにしてみました。(:うるみ漆の乾口塗り) 今回はじめて知ったのですが、我が国には『日本マンホール蓋学会』なる団体があって、特にデザインマンホールに関してマニアックな調査研究が繰り広げられている模様です!笑 「マンホール蓋」で画像検索すると、デザインや構図の勉強になること請け合いです。お試しあれ! 【塗師:魁】 |
◆菊文様の長方盆(大判型)です。 『籬菊(まがきぎく)蒔絵手箱(:熊野速玉大社蔵)』の側面部分を、一部省略して図案化しました。 重たそうな八重菊の花と、華奢(きゃしゃ)にたわんだ茎との対比が面白いデザインです。 独特な形状の葉、控えめで可愛い蕾など、蒔絵特有の絵柄が丁寧にレリーフ表現されています。 菊の花弁については、「面を取って丸味を出す」「花弁脈を入れる」など、別の彫り方もありましたが、 作者の意向でオリジナルの味わいを尊重し、細い薬研だけで彫刻表現してみました。 結果的に、花全体を明るく研ぎ出すことが容易になり、この表現で正解だったと思います。 この作品は背景の面積が広く、そのぶん地(:背景)の刀痕が果たす役割効果も大きいですが、 粒の揃った刀目(とうめ)が隅々まで流れるように行き渡っていて、雅(みやび)な絵柄を上品に浮き立たせています。 根気の要る作業が多かったと思いますが、使って良し、飾って良しの、上々の出来栄えになりました。 塗りは本朱干口塗りの研ぎ分けです。 【塗師:光】 |
【 以下はオールディーズ(:昔懐かしい作品集)です 】
※フィルム写真をデジタル化した画像なので、画質が少し荒れていますm(__)m
◆鶴亀松竹椿文木笈(中尊寺蔵)を6枚組の壁飾りにしたものです。府中市美術館で開催された道友会展(平成17年)に下段と中段の4枚が出品され、その後、上段の2枚が追加制作されて「6枚組」として完成しました。 6枚組の完成作は、上野の東京都美術館で開催されたニュークリエイティブ展や、六本木の新国立美術館で開催された平泉展にも出品されました。出品者6名が、巨大な展示会場を右往左往した思い出深い合同展示作品です。 彫りは写真資料を参照しながら、オリジナルに忠実な再現を可能な範囲で試みました。 塗りはオリジナルから少し離れて、自由裁量で加飾表現してあります。(椿の葉や幹の色、下段の岩肌の表現などがオリジナルとは異なります。) 苦労した作品なのに、なぜか6枚組の全体写真が残っておらず、上段の2枚は別のカメラで撮ったため、発色のニュアンスが違ってしまっています。 残念至極ですが、イマジネーションで不備を補いつつご高覧頂けると有り難いです。【塗師:魁+光】 |
【↑】中下段4枚組の全体写真は見つかりました! |
◆松竹梅文様の銘々皿三枚組です。 図案は、江戸時代の釘隠しのデザインを参考にしました。 輪花(りんか)型のくずしは、作者の手によるものです。 晴れやかで大胆な意匠がお祝いの席を盛り上げそうです。 【塗師:光】 |
◆唐草文様の眼鏡入れです。 ワラビ状に捻転する唐草文様に、シャクリと面取りでダ イナミックな肉付けをほどこしています。四隅にはリボン のような装飾も見られ、和洋を折衷したエスニックな趣き を感じます。 【塗師:魁】 |
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◆三果文様の丸盆です。仏手柑・桃・柘榴の『三果』は それぞれ多福・多寿・多子の『三多』を象徴する縁起物 の果実です。中国では旧正月に三多の年画を飾って祝 う家もあるそうです。この作品はとても精緻な彫り口で 晴れの日の床の間に飾りたくなる出来栄えですね。 【塗師:魁】 |
◆百合と菊の姫鏡です。 画像が不鮮明で残念ですが、たいへん緻密な拵えで 細工物として上々の出来栄えです。姫鏡は経年使用 で根来(ねごろ)風の斑(ふ)模様が出やすいですが、 この作品はどんな斑が出るか・・・とても楽しみです。 ※歴史のページに斑模様の記述があります。【塗師:魁】 |
◆牡丹文様の茶托五枚組です。 図案は家紋を参考にしたものだったと思いますが、 左側の葉と花弁1枚を省略して左右対称性を崩し、 意匠に動きを与えました。花弁を縁取る片薬研が、 作品の存在感を高めているように感じます。 【塗師:光】 |
◆檜垣(ひがき)型の網代と瓢箪文様の長方皿です。 網代(あじろ)の上に乗ったひょうたん文様をレリーフ 表現するのが難しく、練習彫りを繰り返した記憶が あります。こうしてあらためて見ると、たいへん小粋 な絵柄で売り物にもなりそうです。【塗師:魁】 |
◆牡丹と孔雀文様の硯箱です。 オリジナルは中国の古典的な彫漆作品。二羽の孔雀が 互いを意識しながら、牡丹の花叢を左回りに巡っています。 中央の密度の高い彫りと、周囲のシンプルな漆黒が 非常に対称的でインパクトがあります。【塗師:魁】 ※彫刻部分の全景がバックナンバー(4)にあります。 |
◆屈輪(ぐり)文様の丸盆です。オリジナルは中国の 八輪花形の彫漆盆。写真資料を見ながら、かなり 気合を入れてお稽古した記憶があります。彫りの深さ、 面の取り具合も揃っていて、素晴らしい出来栄えです。 拡大写真が見つからないのが残念です。【塗師:魁】 |
◆桜と菊と紅葉のティッシュボックスです。 大きな桜花を角向かいに対置し、小さな菊花と紅葉を 無作為的に散らしてあります。ちょっと大胆な構図です。 配色も面白く、本朱漆・うるみ漆・洗い朱黄口などが 乾口塗りで塗り分けられ、研ぎ分けられています。 洋間空間での使用も似合いそうです。 【塗師:光】 |
◆アイヌ文様の箸箱です。 アイヌ資料館で見かけた古いデザインを再構成して使わせていただきました。オリジナルは「イクパスイ」と呼ばれるへら状の木彫具で、神さまに酒を献じ人の願いを伝えるための祭具であると説明されていました。背景を薬研で処理し、刀痕と平地を交互に彫り分けて、本朱干口塗りで研ぎ分けました。 【塗師:魁】 |
■――ということで、久しぶりに、作品展示室の更新をさせて頂きました。
教室でもちょっとお話ししましたが、このところ様々な問題が生じ、なかなか更新できませんでしたm(__)m
まず契約中のウェブスペースのレンタル容量が上限に達し、
容量を倍増しようとしたら、旧バージョンのホームページ作成ソフトが不調になり、
新バージョンに乗り換えると、今度は契約会社の都合で『レンタルウェブスペースを閉鎖する』と通知され、
あわてて契約会社紹介先の某社レンタルサーバーに引っ越したら、
『うちも5~10年後、どうなるかわからないですよ~』と開き直られ、
抜本的な見直しをはかるべく、「独自ドメイン」なるものを取得して大手サーバーに再引越ししたのが、
本年5月末のことでした・・・ああ、くたびれた。笑
この間、
『301リダイレクト・カノニカルタグ・メタリフレッシュ・HTアクセス・PHPテキスト・APACHE』などなど、
呪文のようなHP・SEO業界用語に悩まされ、
行く先々で小突きまわされる迷いネコのような悪夢の日々を送ったのでした・・・
■・・・と書くとグチってるみたいですが、実はこれはこれでとても稔り多い体験でした!
『無知は無駄骨のもと』ということが、あらためて得心できましたし、
kamakura-bori.comというもったいないような独自ドメインも取得できました。
そのうえ容量もこれまでの100倍になり、ホームページのいろいろな悩みが解消できたような気がします。
もう大丈夫だと思います!
これからまた地道に更新して行きますので、どうか今後とも暖かい眼差しでお見守りくださいませm(__)m
アップルパイが食べたい
でも虫歯にはなりたくない
(2016年9月1日記)
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