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◆鎌倉彫 作品:雲中供養菩薩(:講師模刻)◆2012年1月1日掲載分の末尾に 部分拡大写真を掲載しています。 |
道友会員のこれまでの作品を展示する ギャラリーページです。 丹精込めた手造りの味わいを、どうぞゆっくりとご高覧下さい。 ※前回まで掲載した画像の“バックナンバー”は |
【バックナンバー 一覧】・・・下記の日付をクリックすると、これまでに掲載した画像をご覧になれます。
*2011年12月1日掲載分(1) *2012年1月1日掲載分(2) *2012年4月4日掲載分(3) *2012年7月10日掲載分(4)
*2012年11月4日掲載分(5) *2013年5月5日掲載分(6) *2014年1月5日掲載分(7) *2014年8月16日掲載分(8)
*2016年9月1日掲載分(9)
◆以下は2017年8月1日掲載分です。
◆日の出と雲龍と荒波文様の壁飾りです。 デザインは、中国の古い磁器文様に取材しました。 オリジナルの磁器文様は、背景全体が荒波で埋め尽くされていましたが、 ここでは上半分の荒波を省略して“日の出のイメージ”を付加し、瑞雲を散らしてあります。 瑞雲のレイアウトは作者の創意によるものです。 全体的に見事な出来栄えで、水面上に躍り上がった龍が身をよじって大見得(おおみえ)を切っている様子が、 ダナミックに彫刻表現されています。 “正面向きの龍の顔”は彫刻するのが難しく、彫り手泣かせのアングルですが、 作者は、誰にもわかりやすい素直なレリーフ表現に成功していると思います。 片薬研と流し刀痕を巧みに彫り分けた荒波文様も良い感じで、異形異様な波浪の表情が手がたく表現されています。 『龍』は中国最高位の神獣・吉祥文様で、 中でも“正面龍”は最も高貴な「龍文」として皇帝の服飾などに常用されたそうです。 家の玄関・床の間を飾る最強の招福装飾として、末永く飾り継がれることと思います。 塗りは、本朱塗り・本朱乾口(ひくち)塗り・うるみ漆乾口塗り・本銀粉化粧打ち、の4色塗り分けで仕上げました。 【塗師:光】 |
◆宝相華(?)文様の輪花盆(16角)です。 デザインは東大寺の三月堂(※別名:法華堂)の仏像文様を下敷きに、一部を描き足して図案化しました。 幾何学的な連続文様は、彫りの深さ・幅・角度などを揃えて彫るのが難しいですが、 この作品には“規則正しさ”と“微妙な揺らぎ”が同居していて、とても魅力的な出来栄えに仕上がったと思います。 随所に彫り込まれた峰立てが功を奏し、文様全体に放射状の“広がり感”が漂っています。 外側の突端部にある片薬研の段々を彫る際は、(刀の柄が盆の縁につかえるので)“曲がり”の極浅刀を使いました。 塗りは作者のご意向で、本朱干口塗りの研ぎ分けを採用。 彫刻が施されていない平面を、特に鮮やかな朱色に研ぎ出してみました。 【塗師:光】 ※東大寺の法華堂は、鎌倉彫との歴史的なご縁が深く、メッカのように見なされている“聖地”の一つです。 |
◆吉祥文字の銘々皿です。 書家の奥様の揮毫を、ご主人が正確にレリーフして作品化しました。 文字はそれぞれ、『夢』『春夏秋冬』『吾(われ)唯(ただ)足るを知る』『萬歳』『亀龍寿』と書かれていて、 読みにくそうな文字には、該当する英単語が細い字で添えられています。 「萬歳」の周囲の文字は、真上から時計回りに「子・丑・寅・卯・辰・・・」と続く十二支の干支文字です。 直径15センチの銘々皿に、1~2ミリ幅の細かい文字を浮き彫りするのは、一仕事だったと思いますが、 どの文字も非常にシャープな立ち込みで輪郭表現されており、見ごたえがあります。 キワ彫り部分の刀痕を出来るだけ細かく打って、さらにサンドペーパーで丁寧に丸めてあるので、 『外ギメ彫りを面取りして丸めたような仕上がり』になっています。 塗りは、本朱乾口塗りの研ぎ分け。黒中漆が透けないように、朱漆をカドに盛りながら塗るのが大変でした。 どの字も味わい深いですが、とくに「夢」の文字が笑っているようで好きです。 【塗師:光】 |
◆菊文様の長盆です。 デザインは、古い能装束の文様を参考にしつつ、教室で彫りやすいように再構成して制作しました。 その結果、立ち込み・キワ彫り・片薬研・両薬研・シャクリ・面取り・ボカシ・刀痕・脈入れなどの“基本刀法”をすべて駆使する内容になり、きちんと彫り上げるのが大変な図案になってしまいました。 作者はその一々の課題と丁寧に向き合い、一歩一歩着実に彫り進めて、たいへん味わい深い作品に仕上がったと思います。 作者本人は『脈入れなどの細い薬研と、背景の刀痕がむつかしかった』と言っておられましたが、鑑賞者の目には、それらの彫り口の“一所懸命さ”が、かえって新鮮で魅力的に感じられる場合が多いように感じます。 完成に至るまで、人知れぬ苦労も多かったと思いますが、その甲斐あって、真摯で素直な彫り口の立派な作品になりました。 塗りは本朱乾口塗りの研ぎ分けで仕上げました。【塗師:魁】 |
◆梅文様の2枚組の銘々皿です。(2枚組の銘々皿は『夫婦(めおと)銘々』などと呼ばれます。) 図案は、“昔着物”の絵柄を下敷きに、銘々皿用にアレンジし直しました。 文様のシルエットライン(:背景と接する輪郭線)は、自由角度の内ギメ・両ギメ・外ギメで処理されていますが、 よく見ると、「内ギメ:幹や枝の根もと」「両ギメ:梢の部分」「外ギメ:花や蕾の周囲」という彫り分けが、 さりげなく施されていて、作者の絵読み(:図案の構成を理解すること)の確かさが感じられます。 幹や枝の刀痕も手慣れたタッチで、銘々皿にふさわしい程良い凹凸表現になっています。 とくに1分丸刀で“しべ脈”をさらりと表現したところが、よく彫れているなあ、と感じました。 塗りは、本朱乾口塗りの研ぎ分けです。 【塗師:魁】 |
◆松竹梅文様の丸盆です。 オリジナルは、中国明代の『填漆(てんしつ)松竹梅文合子』(東京国立博物館蔵)。 互いを支え合うように幹・枝をからませた意匠で、“遠近感”や“奥行き感”を表現するのが難しい図案ですが、作者は彫りの深さを適切にコントロールして、この課題をたくみにクリアしていると思います。 松竹梅は“厳しい冬に耐えて共に春を迎える三人の友達”という意味合いを込めて『三友』とも呼ばれます。抱き合うような幹・枝の構図は、その親密さを表しているのでしょうか。 松葉や梅の花弁に彫られた薬研彫りと、足もとの竹葉の流し刀痕の彫刻表現が対照的で、メリハリを意識したバランスの良さが感じられます。 三匹の虫も素朴に愛らしく彫られていて、のどかな春の兆(きざ)しが伝わってきます。 塗りは本朱干口塗りの研ぎ分けです。【塗師:光】 |
◆牡丹文様の丸皿(桃型)です。 図案は柴田是真先生の下絵や、“昔着物”の絵柄などを再構成して制作しました。 花弁の先端部は、“きざみ”を一つ一つ丁寧にしゃくり込んで短い峰を立て、 こんもりと肉厚に盛り上げた花弁中央部には、“一皮剥き”の刀痕が細かく打ってあります。 その結果、花弁一枚一枚の“動き”と“量感”が効果的にレリーフ表現されているように感じます。 この図案は、かなり昔に、何故か談合坂のサービスエリアで描いた思い出があります。(笑)、 長らくお蔵入りになっていましたが、手掛けてくださる会員さんがやっと現れて、陽の目を見るに至りました。 二つの花のバランスをとるのが難しかったと思いますが、基本に忠実な丁寧な彫り口で、 表情豊かな見ごたえのある作品に仕上がりました。 塗りは、 本朱塗り立て(:背景)、根来風研ぎ出し(:辺縁部)、本朱干口塗りの研ぎ分け(:文様)です。 【塗師:光】 |
◆桜文様の銘々皿6枚組です。 デザインは、作者が様々な古典図案から再構成したもの。作者自身のオリジナル図案も含まれています。 文様の輪郭線は“自由角度の片切り彫り”で処理してあり、基本的に、花・蕾の輪郭は“外ギメ”で、枝・茎・ガクの輪郭は“内ギメ”で彫られています。 しかしよく見ると、裏花弁の要所にも意図的な“内ギメ”が援用されていて、“裏花弁の丸味”を強調する工夫がさりげなく施されています。 「6枚組」は、『1枚欠けても“5枚組”として使える』ため、昔はまずまず需要のある組数でしたが、核家族化が進むと「5枚組でも多すぎる」というご時世になり、「6枚組」は本当に見かけなくなりました。 全体に赤味がかった画像の発色ですが、実物は地(:背景)の部分が渋いアズキ色で、かなり落ち着いた色合いです。 撮影テクニックがイマイチですみませんm(__)m 【塗師:魁】 |
◆山ブドウ文様の掛け鏡です。 デザインは作者のオリジナル。 房や実のボリューム感よりも“葉・茎の動き”を主役に据えた、リズミカルな図案です。 やや粗削りな葉・房の彫刻表現と、緻密で量感ゆたかな背景の刀痕表現が対照的で、 それぞれのタッチが互いを引き立てあっているように見えます。 粗削りに見える葉の刀痕も、よく見ると、キザミごとに淡い峰が立てられていて、 作者のさり気ない心くばりが感じられます。 塗りは、本朱乾口塗り(:文様部分)とうるみ漆乾口塗り(:背景部分)の2色塗り分けです。 【塗師:魁】 |
◆屈輪(ぐり)文様の鉢です。 オリジナルは、不動明王図香合(:加賀前田家伝来)の側面の屈輪文様。中心部の巻き込みをやや強めに彫刻表現してみました。 傾斜のある側面に、このての大ぶりな屈輪文様を、キメ彫りで連続的に彫り込むのは、かなり骨の折れる作業ですが、作者は粒のそろった深い彫り口で、迫力ある彫刻表現に成功していると思います。 鉢の中心部の屈輪文様は、室町後期(?)の大香合に取材したもので、深さは最深部で1センチくらいあります。 鉢の上縁部のキザミも作者の手彫りによるものですが、大小の“2つ山”が規則正しく並んでいて、絵付けと彫り込みの精確さがうかがわれます。 塗りは、本朱乾口塗りの研ぎ分け。文様と鉢中を赤く研ぎ出してあります。裏面の青海波文様の刷毛目(はけめ)が、鉢全体の雰囲気にとてもマッチしていますね。 【塗師:魁】 |
◆唐草文様と八方刀痕(はっぽうとうこん)の古鏡皿(こきょうざら)です。 周縁部の唐草文様は法隆寺“金銅小幡”に取材したもの。 中心部の刀痕はやや幅広の八方刀痕(“流れ八方刀痕”とか“流し八方刀痕”などと呼ばれます)です。 唐草文様の深さは1~1.5ミリくらいですが、立ち込みをできるだけ直角にして、面取りの効果が出やすいように工夫してあります。 八方刀痕は、アールを強めに研いだ極浅丸刀で、浅い菊花紋をイメージしながら打ち付けました。 流し八方は、放射文様のバランスを保ちながら“ランダムな味わい”を出すのが難しいですが、この作品は気負わない彫り口で、親しみやすい出来栄えだと思います。 塗りは本朱乾口塗りと堆烏(ついう)塗りの2色塗り分けです。 【塗師:光】 |
◆竹文様の名刺盆です。 デザインは“昔着物”の絵柄(たぶん大正時代のもの)に取材し、彫りやすいように細部を省略して再構成しました。 斜めに交差する竹の幹の輪郭は内ギメ彫り、竹の葉の周囲は外ギメ彫りで縁取ってあります。 交差する竹の重なりを、幹の丸味を保ちながら表現するのが一苦労でしたが、程良い深さで遠近表現されていて、自然な重なり感が出ていると思います。 塗りは黒乾口塗り。白っぽく見えるのは古美粉(ふるびこ:磨き作業で付着させたすす玉とイボタ蝋。実物はもう少しグレー系の色です)。盆の縁は大艶仕上げになっています。 忘れな盆や御布施盆など、色々に使えそうです。 【塗師:光】 |
◆水仙と梅文様の角皿です。 オリジナルは『梅水仙蒔絵硯箱(:大阪市立美術館蔵) 蓋表』。 水仙の向こう側に一枝梅が配置されているところが難しく、 絵柄の重なりが複雑な箇所は、彫りの便宜をはかって少しだけ簡素化しました。 レリーフの図案としては、やや彫りにくい部類に属すると思います。 キメ彫りは、輪郭の遠近を強調するために用いられることがあり、 ここでは水仙の葉の近い側の輪郭が外ギメ、遠い側の輪郭が内ギメ~両ギメで彫られています。 またキメ彫には、絵柄の主役と脇役とを区別するような効果もあり、 植物の場合、花・葉を外ギメ、枝・茎を内ギメ~両ギメで彫り分けることがあります。 この作品は、以上のようなキメ彫の手法が手堅く盛り込まれていて、 複雑な文様構成が、分かりやすくスッキリと彫刻表現されていると思います。 根元の懐紙と結び紐、細く長い水仙の葉脈などもきちんと彫られており、 華やかさと静謐さが自然に伝わってくる仕上がりになりました。 塗りは、本朱乾口塗りの研ぎ分けです。 【塗師:光】 |
◆桜文様の楕円盆(小判盆)です。 オリジナルは、『若松桜蒔絵化粧道具 耳盥(東京国立博物館蔵)』。 豪華で意匠密度の濃い、江戸時代の嫁入道具の文様です。 花芯のしべは、オリジナルを尊重してシンプルな薬研彫りで表現してありますが、 レリーフ向けの工夫(:花弁に長めの峰を立て、葉のキザミを省略するなど)もなされています。 キワをどん深にさらったのは、器物の座りを考慮した結果でしょうか。 背景の淡く細かい刀痕文様に、春満開のうららかさが穏やかに漂っています。 塗りは本朱乾口塗りの研ぎ分けです。 【塗師:魁】 |
◆阿修羅(あしゅら)文様のおつまみ皿です。 オリジナルは、奈良興福寺の阿修羅像の裳(も:スカートのこと)の紋様。 図像のアウトラインをかなり忠実にレリーフ表現してあります。 中央の花木瓜(はなもっこう)とそれを取り巻く屈輪(ぐり)文様との間に地透きをほどこし、 外縁部の花弁文様は自由角度の片薬研だけで彫刻表現してみました。 サイズが小さめ(直径13.5㎝)であるうえに、器の縁がかなり持ち上がっているので、 彫りの深さや薬研の幅を均一にそろえるのが一苦労でしたが、 五枚組のセット仕様として、上々の仕上がりになったと思います。 塗り分けや金銀粉加飾など、いろいろな塗り方が考えられますが、 今回は実用本位の本朱乾口塗りの研ぎ分けを採用しました。 【塗師:魁】 |
◆花文様のおつまみ皿です。 花は、百合・鉄線・昼顔・野菊・椿の五種類。 デザインは、作者が手持ちの写真や古典意匠を再構成して制作しました。 特に、野菊の花芯を取り巻く小さな飾り花弁が目新しく、印象的です。 底面の直径が9センチ位の小さな器で、構図を決めるまでが一仕事でしたが、 素朴で衒(てら)いの無い、味わい深い作品になったと思います。 塗りは、本朱乾口塗りの研ぎ分け。 このお皿は、大きめのコースターとしても使えそうです。 【塗師:魁】 |
◆エンゼルトランペット文様の丸盆です。 作者のご自宅で咲いた花を、作者自身が写真撮影して図案化しました。 しゃくりで表現された“花芯・花弁脈”と、薬研で表現された“葉脈”が対照的で、 刀痕の大小深浅も適材適所に彫り分けられています。 写真を見ながら彫ったためか、 花弁や葉の表情に、自然な“らしさ”が漂っているように感じます。 背景の刀痕には、 所どころに“深い刀目(とうめ)”が意図的に打ってあって、大ぶりな花&葉の存在感を引き立てています。 明治・大正時代の古典的な鎌倉彫の彫り口を参考にしたのでしょうか。 何十年か使い込まれて、黒中漆の斑(ふ)模様が出てくるのが楽しみな刀痕です。 塗りは本朱乾口塗りの研ぎ分け。 盆の縁と花弁を、砥の粉とケットで赤めに研ぎ出しました。 【塗師:魁】 |
◆鶴梅(つるうめ)と青海波(せいがいは)文様の姫鏡です。 鶴梅は、家紋のデザインをほぼ忠実にレリーフ表現し、 青海波は、波の脈を“三本”入れてみました。 直径7.5㎝ほどのサイズなので、細部を正確に彫るのがたいへんでしたが、 充分な深さの丁寧な彫り口で、完成度の高い仕上がりになったと思います。 お孫さんへのプレゼントとうかがいましたが、きっと喜ばれ、大切に使われることでしょう。 塗りは本朱乾口塗りの研ぎ分けです。 【塗師:魁】 |
◆椿と雀文様の小判盆です。 作者愛用の古い調度品の文様を、作者自身が再構成して図案化しました。 もとの文様のほのぼのとした筆遣いを意識して、鳥も花もラフなタッチで彫られています。 その衒(てら)いの無さ、素朴さが、見る人をホッとした気分にさせてくれます。 鎌倉彫の古い作品には、いわゆる“ヘタウマ”系のものが数多くあります。 しかし、ヘタウマ独特の魅力(=大まかさ・稚拙さ・大らかさ・親しみやすさ・寛容・穏和・温もり・味わい・ゆったり・のんびり等々の魅力)は、なかなか発揮されにくいもので、気がつけば「ダラけた生ぬるさ」だけが目立つ仕上がりになりがちです。 “ヘタウマ”が成立するには、「対象への温かい眼差し」「適度な省略とデフォルメ」「基本技能の確かさ」「力まないひたむきさ」「楽天的な無防備さ」などの必要条件があると思いますが、そのような意味で、この作品にはなかなかの“味わい”があるように感じます。 刀痕を廃した雀のすべらかな質感、細かく不揃いな花弁の刀痕、隈取(くまどり)のような葉のしゃくり、大気の不安定さを暗示するランダムな地彫り(:背景の刀痕)、確かな技量で彫り出された枝やフシの自然な表情――すべてがバランス良くブレンドされていて、見飽きることがありません。 「咲き誇る椿」と「気もそぞろな雀」という取り合せも、どこか寓意的でユーモラスです。 いわゆる「ヘタウマ愛好」は、時間の豊かさや心の充実を志向する「スローライフ」と通じ合うところがあるように感じます。 鎌倉彫の古典的な魅力を味わう上で、「ヘタウマ」と「スロー」は、それぞれ重要なキーポイントになるかもしれません。。。 塗りは本朱乾口塗りの研ぎ分けです。 【塗師:魁】 |
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◆百合文様の丸盆です。 オリジナルは『花丸文螺鈿(らでん)箱(:東京国立博物館蔵) 側面部分』。 葉のサイズを加減して、枚数を省略するなど、彫りやすいように図案を再構成してみました。 百合は、花芯部の表現がむつかしく、 また花弁のボリューム感・重なり感・遠近感を表現するのも一苦労ですが、 この作品は量感たっぷりの深めの彫り口で、使っても飾っても楽しめる仕上がりなったと思います。 地(じ:背景)の刀痕表現には、魚群がまるく周遊するような静かな流れがあり、 文様部分の彫刻を自然に引き立てています。 葉表・葉裏の葉脈は、それぞれ薬研彫りと流し刀痕で表現してありますが、 素直で明快な彫り口になっていて、アマチュア作品としてとても好感がもてます。 本作品の塗りは本朱乾口塗りですが、 左下の四色塗り分けの作品と見比べると、かなり異なる印象を受けます。 好みの分かれるとこですが、「塗りの影響は大きいなぁ」と痛感します。 【塗師:魁】 |
◆菊花紋様の丸盆です。 オリジナルは中国の古典的な堆朱作品。 部分的に地透きの面積が広くなりましたが、 それ以外は原典にほぼ忠実な図案化を心がけました。 全体の深さは3ミリ前後で、花の周囲だけ4ミリくらいまで彫り込んであります。 花弁の肉付けに特徴があり、中央部が中高(なかだか)になっているため、 花弁のアウトラインに沿って浅丸刀でしゃくりをほどこしてあります。 裏花弁は、全体的に面を取って充分な丸味を付け、表花弁との彫り分けをより明確にしました。 オリジナルと違うのは、葉に淡い刀痕を打った点ですが、 研ぎ出してみると、花弁の薬研と葉の刀痕との対比が美しく、 鎌倉彫作品として効果的な彫刻表現になったと思います。 花芯脈の薬研としゃくりがかなり繊細で、“塗りつぶれ”が心配でしたが、 塗師の配慮のおかげで、浅く細かい地紋模様が彫ったままの姿で再現されました。 塗りは本朱乾口塗りの研ぎ分け。地透き部分は大艶消しになっています。 【塗師:魁】 |
◆芍薬文様の丸盆です。 こちらもオリジナルは中国の彫漆作品。 脈の数や花芯の表現をいくらか略しましたが、 それ以外は出来るだけオリジナルに忠実な図案化を心がけました。 充分な深さにこなされた花弁に、シャープな花弁脈が整然と彫り込まれていて、 彫刻密度の濃さ・精緻さという点で、非常にインパクトの強い作品です。 花弁先端部のしゃくりやかえりの表現が絶妙で、葉肉の刀痕と葉脈の薬研もバランスが良く、 アマチュア作品として、ほぼ十全な完成度に達しているように感じます。 彫漆の写しは、『地透きと薬研で決まる』といわれますが、 本作は特に「薬研の威力」が実感できる出来栄えです。 教室では、この作品を見て「もう一度薬研の稽古をしよう!」という気持ちになった会員さんもおられ、 基礎練習のモチベーションを高めるという点でも、影響力絶大でした(笑)。 塗りは本朱乾口塗りの研ぎ分けです。 【塗師:魁】 |
◆以下は、オールディーズ(昔懐かしい作品集)です◆
◆バラ文様の掛け鏡です。デザインは作者のオリジナル。当初からキメ彫を意識して図案構成されたものだったと思います。バラの花をやや深めにこなし、他は全体的にあっさり系の絵画的な彫刻表現になっています。中央の鏡像を引き立てるという意味で、効果的な手法だと思います。 【塗師:魁】 |
◆バラ文様の丸盆です。デザインは作者が手持ちの資料を再構成して図案化しました(※棘は意図的に省いてあります)。かなり深い彫りで、花の周囲は5ミリ位の深さだったと思います。キワは“どん深(どんぶか)”に処理されていていますが、ぼかし方が巧みなため、文様がくっきりと浮かび上がっています。真摯で明快なタッチが気持ちよい佳作です。 【塗師:魁】 |
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◆水連文様の切立(きったて)盆です。デザイン構成は作者のオリジナル。「真上から俯瞰する」という奇抜な視点が面白く、ありそうであまり見かけない意匠です。浅丸刀で明快に彫り出された水の流れの上に、中高(なかだか)に肉付けされた花と葉が自然に浮かんでいます。デザイン・彫りともにバランスの良い、出色の出来栄えだと思います。 【塗師:魁】 |
◆藤文様の小判型手鏡です。藤や萩の花は、アウトラインの出入りが小刻みに反復するため、キワ彫りの深さをそろえるのが難しい題材です。それに加え、この作品では葉やツルの複雑な輪郭線も彫り出す必要があり、キワ彫りだけでも一仕事だったろうと思います。よく見ると、一枚一枚の葉の向きに個性があり、作者の細やかな配慮がうかがえます。文様の繊細さと刀痕のおおらかさとのバランスも絶妙で、鎌倉彫らしい衒い(てら)いの無い仕上がりになったと思います。 【塗師:魁】 ※バックナンバー(その7)に、同じ図案をキメ彫で彫った作品例があります。 |
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◆オシドリ文様の楊枝入れです。オリジナルは古い色絵磁器の文様だったと思いますが、文様周囲の連珠と垂れた花弁の意匠は作者の創意によるものです。オシドリの夫婦が菱形の青海波に仲良く並んでいる絵柄に“花の窓枠”が添えられているようで、なかなか愛らしいデザインだと思います。オシドリの翼・羽毛・尾羽が、刀痕と薬研で自然に彫り分けられていて、作者のセンスの良さが感じられます。ひなびた味わいがあるので、気のおけない茶席などで香合として使ってみるのも良さそうです。 【塗師:魁】 |
◆リンドウ・アザミ・???文様の掛け鏡です。デザインは作者のオリジナル。円い鏡面を正五角形の延長線で取り囲んで枠を組むデザインは珍しく、非常に“カッコイイ”です。
中段の花は、ポピーをイメージしながら描いたものが、描き終えた時点で正体不明の花になってしまったとか(笑)。バランス良く枠にはまっているので、そのまま使うことにしました。塗りは、“金剛蒔き錆仕上げ”と“黒乾口塗り”の二色塗り分け。デザインにジャストミートな塗り表現であると思います。 【塗師:魁】 |
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◆バラ文様の丸型パネルです。デザインは、長い木彫歴をもつ作者によるもので、バラ独特の花弁や葉の表情が、木彫風の手慣れた彫り口であっさりと表現されています。花の周囲だけを微妙に深く彫り込む玄人っぽい地透き表現がなされおり、ちょっと心にくいです。この木地はもともと花台用ですが、ここでは室内装飾用の小型パネルとして応用されました。 塗りは本朱乾口塗りと黒乾口塗りの二色塗り分けです。 【塗師:魁】 |
◆屈輪文様の壁飾りです。オリジナルは泉涌寺の屈輪彫(ぐりぼり)香合。クリクリと捻転するワラビ唐草系の屈輪文様を、深い両薬研で真摯に彫刻表現した傑作です。薬研の深さは場所によりかなりの深浅差があり、運刀の精度や角度調整力が要求される題材ですが、作者は明快かつ素直な彫り口で、美しいワラビ唐草を彫出することに成功していると思います。特に、唐草先端部の小さな捻転を表現する“すり鉢状薬研”に味わいがあり、彫り肌もたいへんきれいな出来ばえでした。 塗りは本朱乾口塗りの研ぎ分け。薬研の深い所は艶消しになっていますが、ブツやキズの無いほぼ完ぺきな塗り上がりだったと記憶しています。 【塗師:魁】 |
◆――ということで、
ひさびさに作品展示室を更新させていただきました。
このところ、講師の仕事の都合でなかなか更新できず、
会員の皆様にはほんとに申し訳ありませんでしたm(__)m
教室でも少しお話ししましたが、
仏像彫刻・漆塗り・金継ぎの講座を始めることになり、
その準備やテキスト作りにかなりの時間を使いました。。。
◆それに加え、もともと文章下手なので、作品のコメントを書くのもなかなかはかどらず、
関連書籍をあれこれ調べながら文章を推敲していると、
極端な場合、一つのコメントを書くのに一日がかりになってしまうことも・・・(-_-;)
・・・そんな塩梅ですので、
次回から、コメントを箇条書き(例えば①デザイン典拠 ②主な技法 ③鑑賞のポイント ④塗り解説の4か条)にするなど、
少し短文化・簡略化させていただいて、更新の効率向上を図ってみようかな・・・と考えています。
(――それでも時間がかってしまうかもしれませんが(^_^;)
◆今回更新した作品展示室も、2年以上前の作品がかなり含まれており、
最新の作品を即時的にUPできないのが申し訳ないですが、
できるだけ頑張りますので、会員の皆様には、ご理解とご海容のほどお願い申し上げます。
m(__)mm(__)mm(__)m
◆それでは、今年も暑い夏が続きそうですが、皆様お身体お大切に、お健やかにお過ごしください!
夏休みが明けましたら、皆元気にまた教室でお会いしましょう!!
そろそろ起きようかな・・・
もすこし眠ろうかな・・・
(2017.8.1記)
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